ボードを踏み込む重みと機敏な応答性
コントローラーを握って最初に確かめたのはプッシュのレスポンスだ。スケートボードを題材にしたアクションは、加速の立ち上がりやボードの旋回にもたつきがあると途端に触る気が失せる。本作はその懸念を綺麗に払拭した。スティックの倒し込みに対してノーズの向きが素直に追従し、コンクリートを蹴る初動の硬直も無駄に長引かない。指先の入力がそのまま乾いたアスファルトに伝わる手応えがある。
オーリーの踏み切りから着地に至るまでの挙動も締まっている。踏み切りのタメを必要としながらも判定の戻りが速く、障害物の手前でギリギリまで溜めてから跳ぶ駆け引きが成立する。着地時の軸のブレやグラインドへの吸い付きにも変な引っかかりがない。重心の移動を正確に扱わないとバランスを崩すが、その理屈が指に伝わってくるため失敗しても納得がいく。

砕け散るリスクを背負った路面との交戦
プレイヤーが操るのはガラスと苦痛で練り上げられた悪魔だ。冥界の王から与えられた条件は、スケートボードで月へ辿り着き、それを飲み込むこと。エンプティランズと呼ばれる灰と煙の領域は路面自体が凶悪で、不浄な亀裂やロウで固まった崖が連続する。少しでも着地の角度を誤れば、ガラスの身体は甲高い音を立てて粉々に砕け散る。無敵時間で誤魔化せるような緩い作りではない。
この壊れやすさがアクションの緊張感を底上げしている。凶暴な悪魔が徘徊するストリートを高速で突っ切る際、ただ避けるだけでなく360フリップなどのトリックを叩き込んで敵を破壊する局面がある。回避と攻撃が完全にスケーティングの動作と直結しており、当たり判定の際どい隙間を抜けながらトリックを成功させた瞬間の手応えは格別だ。物忘れの激しいカエルに遭遇するような奇妙な場面でも、常に足元の危険に神経を研ぎ澄ますことになる。

70種以上のトリックと魂を対価にするギア
冥界に用意された9つの階層を進むにつれて、要求されるアクションの難度は跳ね上がる。基本のキックフリップから始まって繰り出せるトリックは70種類以上に及ぶ。バックサイドのテールスライドひとつ取っても、レールの縁にトラックを乗せる際の位置取りが曖昧だと即座に転倒する。適当なボタン連打で派手な技が勝手に出るような甘さはない。足を正しくセットして狙った技を決める規律が求められる。
集めた魂を差し出してデッキやトラック、ホイールを新調するカスタマイズも実用性が高い。見た目を変えるだけの収集要素に留まらず、自分の滑り方に合わせて足回りを整えていく過程がある。試練をクリアして新たなギアを手に入れ、より危険なルートへ挑む流れが一本の太い導線として機能している。

国内向けUIの対応とビートが刻む推進力
Steamストアでの販売価格は2300円。この価格帯のインディー作品としては挙動の作り込みが際立っている。テキスト量自体はそれほど多くないものの、日本語インターフェースの表示に標準で対応しているため、冥界の王との契約やカエルとのやり取りで引っかかる場面はない。キャラクターの音声は日本語非対応だが、言葉少なに進行するゲームデザインを考えれば不便に感じることはなかった。
何より滑走のテンポを強烈に後押しするのが、Blood CulturesとJohn Fioによるサウンドトラックだ。サイケデリックな低音が途切れず鳴り響き、ボードのウィールが路面を削る乾いたノイズと混ざり合う。演出過剰なムービーで足を止められることもなく、純粋に入力とリズムの連動に没入できる。壁際でカメラが不意に寄る場面で視界が遮られる瞬間がある点だけは惜しいが、アクションとしての芯は極めて硬い。





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