Steam · アドベンチャー · インディー

OPUS: Prism Peak

『OPUS: Prism Peak』レビュー:機械式フィルムカメラの撮影と世界の謎を追うアドベンチャー. 機械式フィルムカメラの感触と動物の神霊たちが暮らす土地の空気が胸に残る、丁寧につくられたアドベンチャーです。

そら豆 · 2026年4月18日 · PCでエンディングまで通してプレイ

迷い込んだ土地と、古いカメラの手触り

主人公の中年写真家ユージンが目を覚ましたのは、人間が誰もおらず言葉を話す動物の神霊たちが暮らす「ボウの地」でした。そこで出会った記憶喪失の少女と一緒に、彼女の家があるというムメイ山を目指して歩き出します。設定だけを並べると寓話的なファンタジーですが、漂う空気はどこか懐かしく、同時にどこか寂しげです。

本作は日本語の字幕やUIが揃っているうえに、音声までしっかり日本語吹き替えに対応しています。その声が情景の静けさに寄り添っていて、異郷を彷徨っている感覚がすんなり身体に入ってきました。国内価格は3,480円と、インディーのアドベンチャーとしては少し上の価格帯に入りますが、吹き替えの丁寧さを含めた作りの手堅さを確かめると納得がいきます。

ボウの地に迷い込んだ主人公ユージンと、旅を共にする記憶喪失の少女
ボウの地に迷い込んだ主人公ユージンと、旅を共にする記憶喪失の少女

ピントと露出を合わせる時間のいとおしさ

進行の軸になるのは、ユージンが構える機械式フィルムカメラです。単に指定の場所でシャッターを押すだけの作業ではなく、構図を決めて、ピントを合わせ、感光の度合いを見極め、状況に応じてフィルターを差し替える手作業が求められます。ファインダーの枠を覗き込んで、ダイヤルを少しずつ回して輪郭がくっきり結像する瞬間は、指先がひんやり澄み渡るような心地よさがありました。

レンズのような形をした「神の火鉢」で炎から浮かび上がる文字を読み解き、条件に合う光景を写真に収めることで、新しい撮影スキルや旅の道具が手に入ります。カメラを構える行為そのものが、ユージンがこの不思議な世界と真面目に向き合おうとする姿勢とぴったり重なっているのが印象的でした。

構図やピント、感光度を自分の手で調整しながらシャッターを切る撮影画面
構図やピント、感光度を自分の手で調整しながらシャッターを切る撮影画面

動物の神霊たちと残されたノート

旅路で出会う動物の神霊たちとのやり取りも心に残ります。こちらの出方や選択によって関係性が変化し、その積み重ねが物語の結末にも影響していきます。誰が記したのかも定かではない「ボウの地研究ノート」に手がかりを書き足し、謎の神火文字を解読していく工程は、忘れ去られた歴史の隙間をそっと埋めていくような静かな楽しさがありました。

メニュー画面のノートを開くとき、紙が擦れる小さな音や、手帳の綴じ目がわずかに軋むような感触が耳に残ります。こういった細部の手触りがしっかり作られているおかげで、ただテキストを追うだけではない、現地で旅の記録をつけている実感が湧いてきました。

手作業を愛せる人に届いてほしい一本

撮影の手順が丁寧なぶん、テンポよく物語だけを駆け抜けたい人には、構図や露出をひとつずつ合わせる時間がまどろっこしく感じられる場面があるかもしれません。フィルムを巻き上げて息を止めるような間をじっくり味わえるかどうかが、本作の評価の分かれ目になりそうです。

それでも、カメラという道具を通して誰かの心や風景の奥にあるものを掬い取る手触りは、他ではなかなか得られない温かさを持っています。3,480円という価格以上の時間を、確かに過ごすことができました。

レンズを思わせる造形を持つ神の火鉢と、周囲に広がるノスタルジックな風景
レンズを思わせる造形を持つ神の火鉢と、周囲に広がるノスタルジックな風景

関連レビュー

もっと見る ›

コメント 16

人気順新着順

★ 人気コメント

ポルボロン4月22日 18:08

面倒くさいのは同意だわ。でもそれを含めてゲームの味付けだろ。撮影の緊張感がないと、ただの散歩ゲーになるわ。

通りすがりz4月18日 21:52

良作。

おかもと4月18日 22:00

操作がまどろっこしくて萎えるわ。写真一枚撮るのにいちいち手間かかって微妙。

スネ夫のいとこ4月18日 17:52

露出調整に結構手間がかかるしなぁ… 撮るたびに一手間挟むので飽きた。とは言ってもあの撮り直しの緊張は悪くない。 のんびりやればいいじゃない…

めんどい4月18日 22:20

@スネ夫のいとこ操作ミス連発で萎えたけど…まあ自分の下手なせいもある。一周したけどあの撮り直しは正直邪魔だった。悪くないっちゃ悪くない。

いなり寿司4月19日 19:59

@スネ夫のいとこ露出調整の手間は確かに感じますが、、フィルムカメラって実際ああいうものなので、再現度としては間違ってないですねぇ

くま2号4月18日 19:03

めっちゃ分かる。ファインダー覗いてピント合わせる作業自体がストーリーの一部になってるの、すごく良いよね。

かき揚げそば4月18日 23:45

@くま2号毎回きっちりピントと露出合わせなきゃいけないの、普通に面倒くさくないか? もうちょっとサクサク撮らせてほしかったわ。

ポルボロン4月22日 18:08

@かき揚げそば面倒くさいのは同意だわ。でもそれを含めてゲームの味付けだろ。撮影の緊張感がないと、ただの散歩ゲーになるわ。

通りすがりz4月18日 21:52

良作。

おかもと4月18日 22:00

操作がまどろっこしくて萎えるわ。写真一枚撮るのにいちいち手間かかって微妙。

butter4月19日 20:14

@おかもと1枚撮るのにピントも露出も合わせなきゃいけないから、サクサク進めたい人はだるく感じるかもね。カメラいじる作業自体を楽しむゲームだし、合わない人はとことん合わなそう。

naoki7144月21日 01:36

@おかもとうーん…確かに操作はくどいけど…フィルムカメラってそういうもんだしな…俺は定価で買うのはちょっと待つかも…セール来たら…

どうしよ4月19日 00:41

これずっと眺めてられるw ファインダー越しの世界がなんか落ち着く

crayon4月19日 20:44

@どうしよ>>@moomin_dani ファインダー越しの世界って、具体的にどんな感じですか?景色がきれいなんですか…?

ken_s114月19日 02:32

レビューにある、カメラの操作が物語の一部って表現、すごくしっくり来ました。撮影に集中してると、いつの間にかボウの地に引き込まれてて。自分はエンディングで、ちょっと泣きそうになりました、、

静岡のミカ4月20日 17:07

ファインダーのピント合わせ、確かにめんどくさいけど…あのじわじわ合わせる感じが癖になるわ。でももっとテンポよく撮れるモード欲しかったな。スコアアタックできないもんかねこのゲーム笑

川口在住のヒロ4月21日 07:48

ボウの地に流れる時間の穏やかさが、昔住んでいた田舎を思い出させてくれました。カメラの操作も、あの土地の空気を味わうための大切な儀式だと感じます。エンディングは、本当に心に残るものでした。

ドラちゃんの兄4月21日 19:55

レビュー読んで買ったわ。マジでカメラの操作がストーリーの一部になってる感じがすごい。ファインダー越しに見える風景が、じわじわと世界観に引き込んでくる。エンディングは普通にやられたわ。